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はじめて作ったアプリが爆死したものの、そこから学んでなんとか2個目をバズらせた話

※この記事は、「個人開発 Advent Calendar 2022」5日目の記事です

アプリを作りたい思い

僕がアプリを開発したいとはじめて思ったのは、10年ほど前だったように記憶しています。特にきっかけがあったわけではないですが、世の中の誰でもがスマホにダウンロードすれば使えるアプリを"自分で"作れるということに、何か得体の知れない万能感と憧れを抱いていたのです。

すぐにアプリ開発に取りかかることはなかったものの、自分の中の思いは燻り続けていました。

それから8年後、2020年、ついにアプリを開発することを決めました。

この記事では、満を持して、8年間の思いの丈をぶつけて作った僕の処女作「Tenbin」が大スベりした話、そして、それに心を折られず(折られたけど頑張って)作った2作目「BookNotion」(2022年4月リリース)をなんとかバズらせた話をします。

Tenbinのアイデア発想

アプリを作るためには、何はなくとも必要なのが、「どんなアプリを作るか?」です。せっかく作るなら、世の中をあっと驚かせるようなアプリを作りたいものです。すでに世の中に存在しているアプリと類似アプリを作っても仕方がありません。(今は考えが変わっていますが、当時はそう思っていました)

世の中を変えたアプリはなんだろう?と考えてみたとき、僕は思ったのです。やっぱSNSはすごいなと。Twitter、Facebook、Instagram、など、SNSは我々の生活を変え、考え方を変え、人生を変えてしまったと言っても過言ではありません。どうせ作るなら、こういうサービスを作るのがいいよな。ザッカーバーグにも作れたんだし、きっと自分にもいいものが作れるだろう!(今は考えが変わっていますが、当時はそう思っていました)

このとき、僕には一つの仮説がありました。

『まだ世の中に必要なSNSは出揃っていないだろう』

InstagramとTwitterの違いを考えたときに、どちらも同じSNSで、投稿機能があり、写真をアップロードできて、フォロー機能があり、いいねできる。かなり似ているのに、どちらにユーザーが集約されることなく、両方使っているユーザーばかり。Snapchatも、同じSNSで、投稿が自動的に消えるようになるという特徴をつけることでここまで巨大なサービスに成長している。

きっと、まだSNSにはホワイトスペースが残っていて、誰も思いついていないSNSは作れるはずだ、と、そう仮説を立てたのです。

また、僕は、Facebookの立ち上げストーリーに着目しました。Facebookは、当初、ザッカーバーグのハーバード在籍時、2人の女性の写真を並べて、どちらがホットなのか選ばせてランキングを作るというサービスから始まっています。

これは当然問題だということですぐにクローズ→ピボットされることになりますが、このストーリーから、2枚の写真を並べて、どちらが良い写真なのかを評価する、そして客観的に評価してもらえるサービスには需要があるんじゃないか、と考えました。

ザッカーバーグの場合は、倫理的に問題のある内容だったからピボットせざるをえなかったものの、そこには底知れぬニーズが隠されているに違いありません。

実際に、TwitterやInstagramで、ニーズの確認を行いました。僕は、フリルの創業ストーリーも知っていたからです。

メルカリよりも先行していたフリマアプリの先駆的存在であるフリルがニーズ検証の中で確認したのは、「ユーザーがそのニーズを仕方なく別の方法で代替しているとき、サービスに対するニーズがある」というものです。

フリルの場合、「女の子たちが使い終わった服を売るために、モノを売る機能などないmixiやTwitterを無理やり使ってなんとかしている」のを発見したことがサービス開発の発端だったと語られています。

僕はTwitterとInstagramであるタイプの投稿がかなりされていることを見つけた時に、興奮しました。

「どっちの方が好き?左の写真の方が好きな人はRT、右の写真が好きな人はいいね、してね!」

リツイート機能といいね機能を無理やり使ってなんとかしている。これや、これがフリルの創業者が言っとったやつや!

ここで重要なポイントがもう一つあります。

フリルの創業者は言っていました。

「彼女たちに、カメラで簡単に写真を撮って出品できるアプリがあったら欲しい?と聞いても欲しいとは言いませんでした。しかし、リリース後にアプリは急速に成長していきました」

と。なるほど、ユーザーは自分の欲しいものを知らんのやな。スティーブ・ジョブズも同じようなことを言っとったし、ユーザーヒアリングは悪手やな!

このとき、すでに僕は間違っていたのです。でも、何が間違っていますか?成長しているサービスを分析し、何人もの成功者の体験を踏まえ、確実にニーズの確認を行ったはずです。僕は成功を確信していました。

このように、落とし穴というのは、本人には見えないから、落とし穴なのです。

Tenbinの失敗

アプリ開発のためには、プログラミングを学習しなければいけません。

Udemyでセールになっていた1980円のコースを受講した期間も含めて、6ヶ月間の開発期間を経て、ついに、世界を変えるSNS「Tenbin」を完成させることができました。

TenbinはSNSですが、自分の持っている写真を他の第三者にレビューしてもらって、どの写真が一番良い写真なのかを客観的に、定量的に知ることのできる点が最大の特徴です。

使い方はこうです。

まずは、自分の写真をレビューしてもらう前に、他のユーザーの写真をレビューすることでポイントを貯める必要があります。

貯まったポイントを消化することで、ようやく、自分の写真を他ユーザーにレビューしてもらうことができる、という仕組みです。

ユーザーたちは、自分の写真がどう評価されたのかを投稿して、お互いにフォロー、コメントし合うことができます。

マネタイズ方法もばっちり最初から考えられていました。

SNSといえば、広告収入、そして、Tenbinでは、それだけでなく、ヘビーユーザーのために、ポイントを購入することもできるというファストパス的なマネタイズポイントも用意されています。

成長アプリの分析、独創的な発想、綿密に設計された相互レビューの仕組み、考え抜かれたUI/UX、全てが完璧。

しかし、一つだけ懸念がありました。僕のエンジニアリングスキルはお世辞にも高いとは言えず、まさに付け焼き刃。もしリリース直後から大量のユーザーが押し寄せることになれば、サーバーは耐えられるのだろうか?バグも無いとは言い切れない。

だが、心配ばかりしてもしょうがない。ええい、ままよ。いざ、リリース!

こうして満を持して世に出た、世界を変える新感覚SNS「Tenbin」の、リリースした2020年10月から2022年11月までの2年強のダウンロード数が、こちら!

あれ?

ん?

どうした?

2年間で、69?

凪(なぎ)、というのは、風がやんで、波がなくなった穏やかな海の状態のことをいいます。船に乗っている時の凪はきっと快適なのでしょう。雲ひとつない青空を眺めて、ぼーっとするひと時というのは、格別なものです。

問題は、ここは海ではない、ということです。

何も起こらない。Twitterでバズりもしない。ユーザーも増えない。クレームもない。

僕の6ヶ月間はこうして、Tenbinの起こした凪の中に消えていきました。

BookNotionのアイデア発想

安心してください。タイトルにもあるように、この話はハッピーエンドです。

ただし、Tenbinの失敗は僕にとって辛いものでした。別に、これに生活をかけているわけでもないし、多額のお金を投資しているわけでもない。ただ、自分が"うまくいく"と確信していたものが、全くうまくいかなかったということが辛かったのです。

よかったのは、僕の中にあるアプリを作りたいという火のともしびが完全には消えて無くならなかったことです。

もっとよかったのは、Tenbinをリリースしたことでした。この時はまだ、このことがどんなによかったのは分かっていませんでしたが、Tenbinをリリース前に頓挫させず、世の中に出す、というところまで持っていけたことが知らず知らず大きな財産となっていたのです。

Tenbinの失敗によって、僕は懲りていました。世界を変えるアプリを作るという大きな野心を挫かれるというのは、思いのほかガッカリするものです。とにかく、こんな思いはもうしたくないな、というのが正直なところでした。

世界を変えることを諦めた僕は、「誰か一人でもいいから、使ってくれるアプリ」を作ろうと考え始めていました。Tenbinのユーザーは、文字通り、ゼロでしたから。

そんな思いがじんわりとありながらも、具体的なアプリのアイデアはなく、Tenbinのリリースから1年が経過していきました。

その1年は、第二子が生まれた直後で、育児に奮闘しており、寝かしつけのときにポッドキャストを聞くことが習慣になっていました。ポッドキャストは、手を使わなくてもコンテンツを消費できるので、新生児の育児に最適です。

いろんなポッドキャストを聞く中で、僕の創作意欲を高めてくれたのは、「ゆる言語学ラジオ」と「超相対性理論」の2つです。

このあたりの話は、以前の記事に書いたので、詳細はそちらに譲りますが、これらのポッドキャストのスピーカーに共通していたのは、大変な読書家で、雑談の中でも、今まで読んだ本からフレーズを引用しながら、軽快に、そして知的に会話を繰り広げていたという点です。

本を読んでも、その内容の98%を忘れてしまう僕にとっては、会話の中で「それでいうと、昨日Twitterで見たんだけど」と、つい最近SNSで見かけた話や言説を持ってくることが精一杯で、何年も前に読んだ本から引用してこれることに、"カッコ良さ"を感じずにはいられませんでした。

なにか簡単に読書で出会ったフレーズを記録しておけるアプリはないものか。探してみても、見当たりません。手間をかけると綺麗に管理ができそうなものはいくつかありましたが、どれも継続して使える気がせず、あのポッドキャスターたちのようになれるのは、まめに読書記録をつけられるほんの一握りの天才の所業なのかと、思った矢先、アイデアが降臨しました。

これを実現するアプリを作ろう。

Tenbinの失敗のあと、消えずに残っていたアプリを作りたいという思いと、本のフレーズを会話の中で引用できるようになりたいという思いが重なって、BookNotionは生まれました。

僕にはもう、世界を変えたいなんて思いはちっともありませんでした。読書しながら簡単にフレーズを記録できる機能、ただこれが欲しい。

成長アプリの分析はしていない。でも、自分がやりたいことを実現させてくれるアプリがないことは分かっている。

ニーズの確認?ニーズ、って何だっけ?自分が欲しいから作るんです。

独創的かどうかも、関係ない。大事なのは、自分にとって使いやすいかどうか。

アイデアの発想ルーツが違うだけで、Tenbinのときとこんなにも考え方が違う。それがいいことなのかどうかは分からないけど、Tenbinが失敗したことだけは身に染みている。

BookNotionリリース

今回は、プログラミング言語の学習はいらなかったので、開発期間は4ヶ月となりました。

出来上がったBookNotionがこちら。

Kindleでハイライトしたものを、KindleアプリからNotionに保存。タイトル、著者、ハイライトは自分で入力が不要で、自動で取得される仕組みになっています。

これをリリースした結果が、こちら。

リリースした2022年4月から11月までの7ヶ月で、ダウンロード数、13000超!

2年間で69のTenbinとは一体何だったんだ。

BookNotionリリース後の反応は。

一番大きなバズを引き起こしてくれたツイートは、1500RT、9000いいねを超えました。

バズよりも嬉しかったのは、このアプリの発想元である「ゆる言語学ラジオ」ではTwitterアカウントで紹介していただき、「超相対性理論」ではポッドキャスト内で紹介していただいたこと。

Tenbinのときとは、何もかもが違っていました。

何もしなくてもユーザーは増え続け、不具合があるとすぐに問い合わせが来る。バグがあって申し訳ないなーと思いながら問い合わせに応えると、「ご回答いただき、ありがとうございます!これからも使い続けます!」と言ってもらえる。

Tenbinの何がダメで、BookNotionの何がよかったのか。

今なら、なぜTenbinがダメだったのかが分かります。

それは、誰も欲しくないものを作ったからです。

まさか、誰も欲しくないものを作れるとは思っていませんでした。調べたところによると、Amazonで売られている商品は3億品目を超えるようです。この3億品目の中に、誰も欲しくないものなんてありませんよね?誰も欲しくないものを作る方が難しくありませんか?

実はそうではなかった。誰も欲しくないものは、無限にあり得ます。世の中では、無限の中から、誰かしら欲しい人がいるモノやサービスが作られ、使われているのだと知りました。

Tenbinは、人に向き合っていませんでした。マーケットという得体の知れない何か、会ったこともない起業家のストーリー、ビジネスモデル、これらに向き合うことで、見事に、誰も欲しくないものを作ることになったのです。

BookNotionを開発することで、もう一つ、分かったことがあります。それは、誰か1人だけが欲しいものなんてものもない、ということです。

今回の場合の"誰か1人"は、僕のことでした。僕という人間は、何も特別な存在ではなくて、ただのone of themです。僕だけが欲しいもの、なんてものがあると考える方が傲慢だとさえ言えます。

はじめて作ったアプリが爆死したものの、そこから学んで何とか2個目をバズらせた話。

このタイトルには2つの嘘があります。

1つ目。バズらせた、というのは意図的に仕掛けたという意味を含みますが、本当は、バズらせることを狙ってはいなかったのです。むしろ、それを狙っていなかったからこそバズることができたのだと思います。

2つ目。僕はTenbinの失敗から学んで考え方を自ら変えたのではありません。失敗と成功をどちらも経験することで、何がワークして、何がワークしなかったのかを事後的に振り返ることができたにすぎません。

今考えると、Tenbinが"爆"死していてよかった。これがもし、そこそこダウンロードされていたら、BookNotionは生まれていなかったかもしれないし、生まれていたとしても、どんな考え方がダメなのかを振り返ることが難しかったでしょう。

以上、はじめて作ったアプリが爆死したおかげで、2個目がバズった後にいろいろ学べた話、でした。

明日の個人開発Advent Calendar 2022は、@jomatsuさんの「昔作ったものについて書きます」です!